日本の耐震に対する懸念
トルコ地震で亡くなった多くの方その一人一人のご冥福をお祈りいたします。
国も文化も宗教も違うのでご冥福という言葉が適切かは分からないのですがその気持ちだけは変わらないと信じております。
日本の報道を見ていると「トルコは日本と同様耐震基準が厳しい」という話しを聞きました。
「しかし、罰金を払えば免除される、見逃してもらえるらしい 」 という報道を受けて「日本はトルコと違って大丈夫だろう」と思われている人が多いような気がします。本当にそうでしょうか?
これは「検査済証交付件数」の表です。
「検査済証」というのは設計を行ってその設計通りに工事が行われて終了した事を検査した証明です。
表を見るとH10年で38%の建物しか検査を行っていません。
要するに62%の建物がどの様に建てられたか検査されずに使われているという事に成ります。
耐震基準、耐火基準、その他お金のかかる部分で手抜きをして適当に建てたかもしれない建物が大多数あることは衝撃です。
実際に実務をしているとこの様な物件に出会う事が沢山ありまして、図面と実物の整合を確認するとほぼすべての物件で図面の通りに施工されていません。
「図面より梁が小さい」「鉄筋の本数が減らされている」「基礎に配管用の大きな穴が開いている」等様々な物件を見てきました。
更に不動産業者より検査済証の無い建物に対して「お金を払うので合法であると1筆かいてくれ」と依頼されたこともあります。
当然断りました。
現状はほとんどトルコと変わらないというか罰金すらない日本の現状はトルコ以下かもしれません。
検査済証の無い物件は、まず徹底的に「建築基準法適合状況調査」をしてから活用検討と流通をお願いします。
例えそれを行ったとしても基礎の配筋、杭の状況は検査できません。
ですから検査済の建物と同等に扱われるという事は無いので、積極的に流通を促すことに対しては個人的には懐疑的です。
出来れば、この様な建物を作って流通させた建設会社、設計事務所、不動産会社に関しては厳罰化をして対応して頂きたいと思っています。
また今まで見てきたこの様な事が行われている多くの物件が「設計」と「施工」が同じ業者で行われる物件である。若しくはデベロッパーや建設会社の下請けで設計事務所が付いているというケースに成っています。
建設過程を監視し検査を行う設計が安く造って高く売ろうとしている所と一体化したり下請けに成ったりという状況では、よほど強い意志を持っていないときちんと機能しません。
ですからこの様な状況を打開するためにも「設計」と「施工」は別にするという事が対策として有効だと考えます。